
<講演の概要>
1872年(明治5年)に司法職務定制が公布され、司法書士の前身である代書人制度が創設されてから150年を超えています。
今、私たち司法書士は、法改正や社会構造の変化、技術革新にともなうIT化やAIへの対応など様々な課題に急いで取り組まなければなりません。
もちろんこれらはとても大事なことですが、同時に、木を植えて育てて守っていくような、長い時間を掛ける取り組みも大切なのではないでしょうか。
急いで取り組まなければいけないことをやろうとするときには、テクノロジーによって成長し進化していくものもある一方で、木を植えるようなロングタームでものを見る視点も必要です。
木を植えて、受益者は誰かというと、50年後100年後の人々で、もはや自分ではなかったりするかもしれませんが、まだ生まれていない世代のために、私たちは何ができるのかということを考えていく。
自分たちがいずれ、誰かの祖先になったとき、未来の世代が、祖先から受け継いだ遺産を前にして、自分たちも未来に向けてやっていこうよと、そう思ってもらえるか。
そうしたロングタイムの時間感覚(=「ディープタイム」)、過去も未来も、日常の想像を超えた時間軸で捉えること、そして、そこから生まれる発想が必要なのではないでしょうか。
150年経った今、これからの150年を考えてみようとしたときに、逆に未来を投影することができるのかもしれません。
頑張ったり踏ん張ったりしなきゃいけない場面もあるかもしれませんが、それでもなお、木を植えて森を育てるようなディープタイムな感覚を持ち続けること、そして、私たちはいかにして「よき祖先」になれるのか、そうした想像力を持ち、もっと意識していくべき時代なのではないでしょうか。
私たちの原点となる歴史を尊び、過去から多くの知見を学びつつも、決してとどまることなく、しっかりと人と向き合い、司法書士としての進化を続けながら、より良い社会・より良い未来へと歩むための役割を果たすことによって、これからのどのような社会環境においても適合し続けることができる存在になることができるのではないでしょうか。
そして、司法書士にとっては、人と真に向き合うこと、人ときちんと繋がること、人と人とが集まるコミュニティを活用することこそが、木を植えて育てて守っていくのと同じディープタイムな取り組みであると考え、日々の仕事や生活におけるマインドをリセットしながら、次の150年に繋がる司法書士像について考えるきっかけを学びたいと思います。
<講師プロフィール>
株式会社Interbeing代表取締役 産業僧 / 武蔵野大学ウェルビーイング学部客員教授・カンファツリーヴィレッジPJT / 浄土真宗本願寺派光明寺僧侶 / 世界経済フォーラム・Young Global Leaders Alumni
1979年、北海道小樽市生まれ。東京大学哲学科卒。インド商科大学院MBA取得。住職向けのお寺経営塾「未来の住職塾」の開講や、寺院のテラスでのカフェ、本堂での音楽ライブイベント、オンライン寺院の立ち上げ、そして一般企業向けに産業医ならぬ産業僧として関わるなど、これまでの常識を越えるような新しいお坊さん像を示し続ける、いわば現代の「ひじり」として活躍。
noteマガジン「松本紹圭の方丈庵」発行。ポッドキャスト「Temple Morning Radio」は平日毎朝6時に配信中。
<著書>
『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011)は世界20ヶ国語に翻訳
翻訳書『グッド・アンセスターわたしたちは「よき祖先」になれるか』(あすなろ書房、2021)
国連UNDP Signals Spotlight 2024に「A GOOD ANCESTOR」寄稿